EPISODE 3

だい3「わりざんしろ最終さいしゅう決戦けっせん

わり算の城の内部

とびらけた瞬間しゅんかん、ひんやりした空気くうきがどっとながてきた。

しろなかひろかった。石造いしづくりのゆかかべたか天井てんじょう松明たいまつのようなひかりがいくつかともっているが、それでも薄暗うすぐらい。かべのあちこちに「÷」の紋章もんしょうきざまれていて、ゆかにはおおきな数字すうじのタイルがならんでいた。

でも、おかしかった。

タイルの数字すうじが、ところどころけている。「3」が「?」にわっていたり、「148」がきりでかすれてめなくなっていたり。かべ紋章もんしょうもひびがはいり、天井てんじょうのすみからカオスのきりがじわじわとんできていた。

「ここもひどいな……」

ハルはつぶやいた。

「おしろ中心ちゅうしんにある『ざん』に、おおきなフォグナンバーがいるはずだよ」ピコがった。「そいつがきり発生源はっせいげんになってるの。そこまでたどりければ、おしろ全体ぜんたいきりらせる」

「『ざん』はどこ?」

「この廊下ろうかをまっすぐすすんで、一番いちばんおくおおきなとびらこう」

シロがぴょんとまえた。

「ボクが道案内みちあんないするよ。このしろまえたことあるから」

たよりになる!」

ハルはシロのうしろについてあるはじめた。

* * *

廊下ろうかすすむにつれ、かべきりくなっていった。

ハルの足元あしもとで、ゆかのタイルがひとつ、ぽっとひかった。タイルにしきかんでいる。

3 ÷ 1

「あ、これは簡単かんたん——」

って」シロがまった。「それはわなだよ。きりつよいエリアだと、簡単かんたんそうにえてじつはひっかけになってるしきてくることがある。あせってこたえないで、ちゃんとて」

「ひっかけ……? でも3÷1は3でしょ」

「うん、それはってるよ。でもこれをて」

シロはゆかさんすすんだ。べつのタイルがぱっとひかった。

3 ÷ 13

「あ……けたちがう! さっきは1だったのに、13になってる」

「そう。きりなかだと数字すうじがにじんでえることがある。だからしきむときはあせらず、くらいをちゃんと確認かくにんしてから計算けいさんするくせをつけて」

ハルはふかいきった。

「わかった。あせらない」

* * *

廊下ろうか途中とちゅうに、横道よこみちがあった。シロがみぎがろうとして、ぴたりとまった。

「……ちょっとって」

「どうしたの?」

シロのはながひくひくした。

「このさきしきがたくさんある。でもきりがすごくい。フォグナンバーのれじゃなくて……もっとおおきいなにかかもしれない」

ピコがシロのとなりって、ほそめた。

「これって……ちゅうボスのきり将軍しょうぐんフォグジェネラルじゃないかな」

きり将軍しょうぐん!?」ハルはこえ裏返うらがえった。「なにそれ、初耳はつみみなんだけど」

「ごめん、ってなかったね」ピコがあたまをかいた。「フォグナンバーをまとめてる、すこつよいフォグナンバーのことだよ。からだおおきくて、してくるしきむずかしい」

「どのくらいむずかしい?」

ふたけたでしきだよ」

シロがしずかにった。ハルはおもわずつばんだ。

「に、ふたけた……たとえば?」

「たとえば——」シロが地面じめんつめいた。

96 ÷ 12 84 ÷ 21 75 ÷ 25

「こういうやつ。かずふたけたになると、かんがかたわってくるよ」

「えっと……どうわるの?」

いまから説明せつめいする」シロはかえり、ハルのをまっすぐた。「まえに、ちゃんと理解りかいしてからたたかおう。あせって間違まちがえたらまずいから」

* * *

三人さんにん廊下ろうかのすみにこしろした。シロが地面じめん丁寧ていねいきながら説明せつめいはじめた。

ふたけた÷ふたけたでも、基本的きほんてきかんがかたひとけたでるのとおなじ。くらいごとにかんがえること、あまりをろすこと——でもひとつだけ、あたらしいことがある」

なに?」

かずふたけたになると、しょうのめどをつけるのがむずかしくなるの。ひとけたなら、九九くく使つかえばすぐわかったでしょ?でもふたけただと九九くくがそのまま使つかえないから、まず『だいたいいくつかな』と見当けんとうをつける必要ひつようがある」

見当けんとうをつける……?」

「うん。たとえば96÷12をかんがえてみよう」

96 ÷ 12

「12を、まず『だいたい10』とおもって見当けんとうをつける。96÷10はだいたい9。だからしょうは9くらいかな、と予想よそうする。そして12×9=108……あ、108は96よりおおきいから、9はおおきすぎた」

「じゃあひとらして8?」

「そう!12×8=96。ぴったり!だからこたえは8」

96 ÷ 12 = 8

「なるほど……まず見当けんとうをつけて、かけてみて、おおきすぎたらひとらすんだ」

ぎゃくちいさすぎることもあるよ。たとえば——」シロはつづけた。

84 ÷ 21

「21を『だいたい20』とて、84÷20はだいたい4。だからしょうは4かなと予想よそう。21×4=84。ぴったり!こたえは4」

84 ÷ 21 = 4

つぎはこれ」

75 ÷ 25

「25を『だいたい20』とて、75÷20はだいたい3。25×3=75。ぴったり!こたえは3」

75 ÷ 25 = 3

ハルはうんうんとうなずきながら、あたまなか整理せいりした。

「まとめると——まずかずまるめて見当けんとうをつける、かけてたしかめる、おおきすぎたららす、ちいさすぎたらやす、ってこと?」

完璧かんぺき!」シロがうれしそうにみみをぴんとてた。「あともうひとつ、あまりが場合ばあい練習れんしゅうしておこう」

97 ÷ 13

「13を『だいたい10』とて、97÷10はだいたい9。でも13×9=117、おおきすぎ。8にしてみると、13×8=104、まだおおきい。7にすると、13×7=91。97から91をくとあまりは6。6は13よりちいさいからOK。こたえは7あまり6」

97 ÷ 13 = 7 あまり 6

あまりは、かずよりちいさくないといけないんだよね」ハルが確認かくにんした。

「そう!あまりがかずおなじかおおきかったら、しょうをもうひとやせるってことだから、まだれるってことになる。だからあまりはかならかずよりちいさくなるまで計算けいさんする」

「わかった」

ハルはもう一度いちど、さっきのしきあたまなか復習ふくしゅうした。

見当けんとうをつける。かけてたしかめる。あまりはかずよりちいさく。

算数石さんすうせきがじわりとあたたかくなった。

* * *
霧将軍フォグジェネラルとの対決

準備じゅんびできた?」シロがいた。

「うん、こう」

三人さんにん横道よこみちおくへとすすんだ。

きりがぐっとくなった。松明たいまつひかりもここまではとどかず、ハルの算数石さんすうせきひかりだけがうっすらと足元あしもとらしている。

部屋へやおくに、それはいた。

フォグジェネラル——きり将軍しょうぐん

普通ふつうのフォグナンバーの三倍さんばいはあるおおきさで、体中からだじゅうきりがまとわりついている。からだ表面ひょうめんには「?」マークがいくつも点滅てんめつしていて、ちかづくだけでつめたいきりはださるようにかんじた。

おおきい……」

ハルはおもわずあとずさりしそうになったが、ぐっとこらえた。

フォグジェネラルのからだに、じわりとしきかびがった。

⚔️ きり将軍しょうぐんフォグジェネラル
96 ÷ 12  84 ÷ 21  75 ÷ 25

みっ同時どうじかんでいる。

みっ一気いっきかないといけないの!?」

「できるよ」シロがとなりならんだ。「ハルちゃんが全部ぜんぶかんがえられたら、いし一気いっきさんぱつぶんひかりせる。あせらなくていい。いっずつやろう」

ピコがハルのかたって、しずかにった。

「ハルちゃんなら大丈夫だいじょうぶ。さっきちゃんと理解りかいしたんだから」

* * *

ハルは算数石さんすうせき両手りょうてつつんだ。

深呼吸しんこきゅう

まずひと

96÷12。12をまるめて10。96÷10はだいたい9。でも12×9=108、おおきすぎ。12×8=96、ぴったり。こたえは8。

「8!」

算数石さんすうせきからひとすじひかり

* * *

ふた

84÷21。21をまるめて20。84÷20はだいたい4。21×4=84、ぴったり。こたえは4。

「4!」

またひとすじひかり

* * *

みっ

75÷25。25をまるめて20。75÷20はだいたい3。25×3=75、ぴったり。こたえは3。

「3!」

* * *

みっすじひかり一本いっぽんたばになって、フォグジェネラルにまっすぐんでいった。

ぴかああああっ!!

直撃ちょくげき

フォグジェネラルのからだの「?」マークが全部ぜんぶ一瞬いっしゅん数字すうじわった。「8」「4」「3」——そしてぱああっとつよひかりはじけて、きり将軍しょうぐんからだきりけるようにえていった。

部屋へやなかきりがすっとれた。

石造いしづくりのかべがあらわになり、まれたたくさんの「÷」の紋章もんしょう金色きんいろかがやいていた。

「やったあ!!」

ピコが宙返ちゅうがえりしながらさけんだ。

シロがぴょんぴょんとハルのまわりをまわった。

完璧かんぺきだったよ、ハルちゃん! みっ全部ぜんぶかんがかたもばっちり!」

ハルはへなへなとそのにしゃがみんだ。ひざがちょっとがくがくしていた。でも、むね算数石さんすうせきはこれまでで一番いちばんつよかがやいていた。

* * *
割り算の間のモニュメント

横道よこみちもどり、廊下ろうかおくへとすすむと、予告よこくどおおおきなとびらがあった。

ざん」と金色きんいろ文字もじかれている。

とびらすと、ひろまる部屋へやた。天井てんじょうがとてもたかく、中央ちゅうおうおおきな「÷」のモニュメントがっている。そのモニュメントが、いまはぼんやりとひかりはなっていた。きり完全かんぜんれていた。

部屋へやのすみに、ちいさなものがうずくまっているのがえた。

ハルがちかづくと、それはかおげた。ちいさなネズミだった。ふくて、くたびれた表情ひょうじょうをしている。

「あなたたちが……きりらしてくれたの?」

「うん。大丈夫だいじょうぶだよ、もうきりえたから」

ネズミはなみだをためた。

「よかった……ずっとここにめられてて、そとられなかったの。きりなかしきがぐちゃぐちゃになって、なにただしいのかわからなくなって……」

「もう大丈夫だいじょうぶ」ハルはネズミのまえにしゃがんでにっこりわらった。「しきむずかしくても、順番じゅんばんどおりにかんがえればかならずわかるから」

ネズミはこくんとうなずき、とびらほうへとけていった。

* * *

しばらくして、三人さんにんざん中央ちゅうおうかいっていた。

「ピコ」ハルがった。「カオスのきりって、どこからてるの?ムゲンってひとおくんでるってってたけど、そのひとはどこにいるの?」

ピコはすことおをした。

「ナンバーランドの一番いちばんふかいところ……『ゼロの荒野こうや』って場所ばしょにいるってわれてる。でもそこにくまでには、まだたくさんのエリアをとおらないといけない」

「そこまでけば、ムゲンをめられる?」

「……たぶん。でも」ピコは言葉ことばえらぶようにつづけた。「ムゲンはね、もともとわるひとじゃないとおもうの。ただ、算数さんすうかんがえることをやめちゃっただけで……だから、やっつけるよりも、もう一度いちどわかってもらえたら、っておもってる」

ハルはその言葉ことばを、むねなかでそっとあたためた。

算数さんすうかんがえることをやめたひと。わたしも今日きょうあさまで、ちょっとそうだったかも。

「わかった。さきいそごう」

ハルはがり、算数石さんすうせきをぎゅっとにぎった。いしはあたたかくかがやいていた。

* * *

ざんけ、おしろ反対側はんたいがわ出口でぐちた。

まえには、ひらけたみちつづいていた。みちのむこうに、なだらかな丘陵きゅうりょう地帯ちたいひろがっている。おかうえに、ななめにかたむいたはしえた。

「あのはし……」

角度かくどおかだよ」ピコがった。「つぎのエリア。はしがってしまってて、わたれなくなってるってはなしだった」

はしがってる?なんで?」

角度かくどきりおかされると、まっすぐなはずのものがかたむいてしまうの。ただしい角度かくどもどさないといけない」

シロがよこでぴょんとねた。

角度かくどって、分度器ぶんどきはかるやつ?」

「そう。ハルちゃん、分度器ぶんどき使つかえた?」ピコがハルをた。

「うーんと……学校がっこうでちょっとだけやったけど、あんまり自信じしんない」

大丈夫だいじょうぶだよ。きながらかんがえよう」

ハルはかたむいたはし遠目とおめながら、ふかいきった。

かぜいて、おかくさがさらさらとなびいた。

こう、シロ、ピコ」

「うん!」「ピコっと計算けいさん!」

三人さんにん角度かくどおかへとかってあるはじめた。

📝 今話こんわのポイント

ふたけた÷ふたけたの筆算ひっさんでは、まずかずまるめて「だいたいいくつかな」と見当けんとうをつけることが大切たいせつです。かけざんたしかめて、おおきすぎたらひとらし、ちいさすぎたらひとやします。また、あまりはかならかずよりちいさくなるまで計算けいさんしましょう!

だい4角度かくどおかかたむいたはし」へつづく〜

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